16日、日本学術会議の会員候補の任命拒否を巡る菅義偉首相と梶田隆章会長の初会談は、平行線に終わった。首相は判断を変えるつもりはないが、対話の窓を開いている姿勢を世論にアピールすることで「強権的」「説明不足」との批判をかわす狙いがあるとみられる。ただ、一連の対応は内閣支持率に影響しており、与党内からは不満も漏れ始めた。 【写真】「政治主導ではなく独裁」学術会議問題を語る元官僚 会談後、記者団の取材要請に応じた首相。梶田氏から「未来志向で学術会議の在り方を政府と共に考えたい」との提案を受けたと明かし、「コミュニケーションを取り、進めていくことで合意した」と強調してみせた。 任命拒否問題に加え、学術会議を「行政改革の対象」に据え、約10億円の国費支出などの妥当性を検証していくと畳み掛けたこともあり、衝撃は広がっている。トップ会談はさらなる火種になりかねないとの見方もあったが、首相は「こそこそして対話を避ければ『逃げ』と見られ、世論に負のイメージを与えてしまう」(周辺)として、梶田氏の申し入れに応じた。政府関係者はもう一つの側面を解説する。「長引かせたくない官邸にとって、学術会議側を懐柔し、全面対決回避を演出する会談だ」
説明不足に与党から異論も
別の政府関係者は「官邸の危機感はまだ薄いが、与党サイドは世論の反応に神経をとがらせている」と話す。NHKが9~11日に実施した世論調査では、内閣支持率は55%と発足直後から7ポイント下落。また、約半数が政府の説明を「納得できない」と回答しているためだ。 自民党の稲田朋美元政調会長は、日本記者クラブでの記者会見で「こういう判断基準で任命しなかった、との説明は必要だ」と疑問視。公明党の石井啓一幹事長も16日、自民が学術会議の在り方検討を目的に立ち上げたプロジェクトチームが、出発点である任命拒否を取り扱わないとしていることを念頭に「『任命問題の論点ずらし』と誤解されぬよう対応すべきだ」と注文を付けた。 野党側は、26日召集予定の臨時国会で徹底追及する構え。立憲民主党の枝野幸男代表はこの日、「(任命拒否の理由を)何も説明しないこと自体が、政権の『上から目線』。その姿勢は安倍政権以上だ」。立民幹部は「これからも、ボディーブローのようにじわじわ菅政権に効いてくるだろう」と笑みを浮かべた。 (一ノ宮史成、前田倫之、川口安子)
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